wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

榎原雅治『室町幕府と地方の社会』

日曜日は大歴大会(報告者をはじめ関係者の皆様方、お疲れ様でした)、月曜日は吹田を終えてから実家の様子見、火曜日は枚方と続き、表題書を読了。日本中世史関連の新書を購入するのも久しぶりだった。南北朝期から明応政変までを全5章立てでまとめたものhttps://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/43/6/4315810.html。最初の2章が鎌倉幕府倒壊から義満までの政治史をたどりながら、公武文化の融合による新しい貴族文化=「伝統文化」の誕生という視点でまとめられ、中間の3章で村・荘園・地方支配・交易の様相が手際よく整理され、後半の4・5章で義持から明応政変までの政治史がたどられるとともに、室町殿による代始軍事行動の推移と、徳政と寺社領保護という中世を通じた政策基調の終焉への過程として説明される。その上で室町社会を平安末期から続いてきた一時代の終わりであるとともに、村に代表される現在に続く新たな時代の始まりと評価し、あとがきでも矢野荘の調査経験を振り返りながら700年続いた村への賛辞で締めくくられている。著者は荘園史の研究者で中間におかれた3章を際立たせながら室町社会の様相をわかりやすく伝えるものになっている。また大日本史料第七編の編纂を職責とされる立場から、鎌倉後期から15世紀末までを徳政と寺社領保護の展開という一貫した視覚から捉えられている点もさすが。もう少し在地よりでもという無い物ねだりがないわけではないが、最新の通史叙述として安心して薦められるもの。明日は今週土曜出勤の振替で久しぶりの休日。某公募書類や定期試験などを早めに仕上げて、某請負仕事にもそろそろ取りかからなければならない。