wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

美川圭『後三条天皇ー中世の基礎を築いた君主』

本日は非常勤先で講義前に史料講読用のコピーテキストに返り点などをつけたものを作成、ただ印刷トラブルなどがあってバタバタしてしまい、いざ配布する際に三枚つくったはずが二枚しかなく、別の用紙を印刷してしまったらしい。ところが残りの一枚がどこを探しても全く見当たらない…、情けない限り。気を取り直して電車読書の備忘https://www.yamakawa.co.jp/product/54821。すでに白河・後白河の評伝を刊行している著者が、日本史リブレットの一冊として刊行したもの。石井進説に代表される戦後歴史学の通説を継承し、河内祥輔の摂関家外戚説を批判し、時代を画する存在として積極的に評価したもの。それ以外も全体に読者を意識した研究史の整理は丁寧で、延久の軍事行動・円宗寺の評価についても近年の研究の展開が的確にまとめられており、ちゃんとファローしていなかった身としてもありがたい。また四天王寺・住吉社への御幸などの事跡があり個人的に気になっていた陽明門院について、その出自(道長に誕生を喜ばれなかった孫娘)から役割まで積極的に評価されており、いろいろ勉強になった。なお著者は白河の評伝の副題を「中世をひらいた帝王」としており、副題の対比も興味深いところ。