wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐藤彰一『禁欲のヨーロッパ』

今週で講義は3回目。7コマとも昨年度より受講者が多く、スライドの整理を含む授業準備とカード整理で時間が過ぎてゆく。ボオッと過ごしてしまった春休みより充実しているといえばそうなのだが、やや疲れもたまってきた。電車読書も在庫整理が進み本日読了したのが表題書http://www.chuko.co.jp/shinsho/2014/02/102253.htmlギリシア・ローマにおける男性の養生法、男性性・女性性を際立たせるための乳児に対する過激な身体操作、若くして政略結婚させられ姦通があっても離婚の自由がないに等しい女性、といった要因がキリスト教の終末論的禁欲と出会い、エジプトの砂漠などでの過酷な東方修道制の思想的・実践的素地を提供するとともに、近代西欧個人主義の前提となっていること、その後に東方修道制がガリアなどに西漸する過程で病気治癒など聖人信仰がうまれるとともに、過酷な規律も緩和されながら都市型修道院として定着していくことが論じられる。前半部は生々しい身体性が論じられ、意図せず修道生活を続けている当方にとっては身がつまされる叙述もあった。ローマの飽食から禁欲への転換は後期の講義でも取り上げているが、これをどのように組み込むかは考えどころ。なお文体が論文調でのため細切れで読むととくに後半部分では理解しにくいところもあったが、ギリシア・ローマ的理念とキリスト教徒の重なりについて、まだまだ興味深い問題があることを知ることができた。