wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

山田邦和『京都 知られざる歴史探検』上

本日はルーティン姫路。18日用のパワポ作成に意外と時間をとられてしまう、予報は雨で入りが気になるところ。電車読書のほうは昨日からの読みさしを読了http://www.shinsensha.com/detail_html/02rekisi/1711-2.html。京都生まれ育った考古学をベースとする著者が、該博な知識と大胆な手法で余り知られていない京都の史跡を、オールカラーでほぼ3頁で紹介したもので、地図と交通案内も付されている。上巻は上京、洛北、洛東・山科からなり、平安京関連から説き起こし、時代と場所をずらしながら、切り込んでいくスタイルは、学問的手法をわかりやすく伝える点でもあざやか。また聚楽第がらみでは史跡紹介は5節にわたり、考古学をベースとした厳密な復原手法を用いる一方で、秀吉が足利義昭の猶子になれず関白になったとの説を、今出川晴季を媒介として説明する大胆な仮説を提起するなど著者ならでは研究スタイル。図版の大半も著者撮影および著者の収集品からなっており、その点でも余人にはまねできないところ。当方もいちおう中世京都をタイトルとした著書を刊行しているのだが、その範囲に限っても、則天文字で記された正応元年銘の梵鐘、清水寺にある宝篋印塔のルーツ、東福寺大仏の来歴など、全く知らないことが多数あり、恥じ入りばかり。数年の非常勤時代には少し廻ることができたのだが、それも失われもはや京都は遠くになりにけりということか。ただ1596年の地震を「慶長の地震」と呼ぶことには少し違和感がある。地震学の名称ではよくあることなのだが、実際には旧年号(ここでは文禄四年)が地震によって新年号(慶長元年)に改元したもので、やはり文禄地震とよぶべきではないか。