wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

鈴木真太郎『古代マヤ文明』

昨日読了の電車読書の備忘。秋の講義でマヤ文字を取り上げている関係で衝動買いしていたもの。2002年大学卒業後は現地で発掘調査に携わってきたとのこと、ただ伝統的な遺物中心の考古学ではなく、考古人骨研究(生物考古学、バイオアーキオロジー)に基づくもの。人骨・歯の分析から出身地域を同定し、移動の様態・食生活・死因と戦争の関係などを明らかにしながら、マヤ文明全体の盛衰を概観。密林に埋もれた地域だけでなく草原地帯にも広がっており、都市の放棄についても単一の要因ではなく、しかも8世紀から10世紀にかけての長期の動態だったなど、従来もっていた乏しいイメージを刷新することができた。文字についても地域によって異なる字種が用いられているなど研究の到達点が紹介されており有益。遺跡と都市開発との関係についても言及があり、いろいろな意味で勉強になった。なお著者は日本に戻り考古学研究室で教鞭を執られているようで、日本でもバイオアーキオロジーが進むことになるのだろうか。

古代マヤ文明|新書|中央公論新社