wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

密偵

本日で六甲台は最終、やはり7回で教養というのは無理があり、近世初期で切り上げに。いつもは図書館だが、久しぶりに映画でもと思い、表題作を梅田で1100円で鑑賞。月曜日にチラッと調べただけで、1920年代の植民地朝鮮ものというだけで選んだもの。上映前のちらし(HPもhttp://mittei.ayapro.ne.jp/)によると韓国で750万人を動員したという娯楽大作で、セットも京城駅はちゃちにみえたが、エンドロールによると途中の舞台となった上海ロケもおこなったらしく、車も含めてそれなりの20年代の町並みになっていた。とりわけ中盤のクライマックスシーンである上海から京城へ向かう列車は特等から二等までの客層がきっちり描き分けられおり、かなりの費用がかかっていると思われる。展開もスピーディーで特に後半はなかなか予想できないものになっていて見応えがあった。もっとも最後に主人公がからむ若者が誰かわからずそこは戸惑ってしまった(その前に登場シーンがあって、見逃してしまっただろうか)。また著名な日本人俳優の出演は総督府警務局部長ヒガシ役の鶴見辰吾のみで(電車内の端役の芸者など、何人かは相応の日本語をしゃべっていたが)、主人公である朝鮮人警務と対抗関係にあるハシモトを韓国人俳優が演じているため、そのキャラクターがちゃんとつかめなかった。上海では中国語も聞こえており、ハンガリーアナキストで爆弾のスペシャリストも出演していたが、裁判官(一応、日本語はしゃべっているのだが)など端役も含めてもう少し日本人が出演していれば、よりリアルなものになったのに残念。義烈団という植民地当局から観たら「武装テロリスト集団」を肯定的に描いているため、オファーがあっても出演が拒否された可能性もあるのだが。「日韓友好」を前面に出したスタイルではなく、このようなリアルな現実を反映した作品が両国俳優の出演で制作される見通しは、近年の日本社会では絶望的になってしまった。観客は中年層の女性を中心に満杯だったが、終わった後にヘイトも含めて特に会話は聞こえなかった。恐らく固まってしまっていたのではないか。