wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

小泉龍人『都市の起源』

以前に記したように、姫路勤務に祝日は存在せず、水曜振り替えで木曜日が佐用郡などの赤松氏史跡調査、本日は館でのDB作成業務に当てる。ただ史跡の写真は不可解な消え方をしてしまい(ウィルスチェックでは問題なかった)、貴重な民俗行事も含めてここでは紹介することはできず、本日読了の電車読書の備忘のみ記す。たまに都市史研究者を僭称することもあるという事情と、秋の講義ネタ探しという思惑から衝動買いしたものhttp://bookclub.kodansha.co.jp/title?code=1000026847西アジア考古学という立場から、メソポタミア地域について、鍵のない共同倉庫という平等な共同体から、「よそ者」の出現・鍵つき倉庫・専業の職人の登場、城壁と計画的な街区、シンボルの登場と物流網、神殿の出現(都市ごとのジッグラド=塔を象徴する記号が存在)と専門的な書記および組織的な武器生産、7000年前に芽生え、5000年ほど前に開花する都市国家の歩みが、いくつかのメルクマールを通じてわかりやすく描かれている。また地球温暖化によるペルシャ湾海進(縄文海進と同じ要因)が塩害を深刻化させ居住域が限定されたこと、開放的な地形環境ゆえにもたらされる様々な軋轢によって、エジプト・日本などと比してもっと早くに都市国家を成立させたという。日本を持ち出すのはどうかと思うのだが、全体の論旨は説得的で、同じ都市を考えるといっても、自然環境の相違によって成り立ちがかなり異なる一方で、「よそ者」の存在が重要だという指摘は興味深いところ。なお当方より一年早く生まれたという著者は長らく現地で発掘調査に携わってこられ、イラク戦争後の現地および日本イメージの変化も実感されているとのこと。日本で怠惰な研究生活を過ごしている当方とは比べものにはならないが、テニュア持ちではないにもかかわらず、こうして活躍されている点も励まされるところ。とはいえ、もはやこの時間でほぼ頭は働いておらず。何とかリズムを作らなければならないのだが…。