wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

京都文化博物館「戦国時代展」「東寺百合文書展」

本日午後は京都の某大学との定期団交。といっても頭数になりに行っただけで、主目的は表題の展覧会http://www.bunpaku.or.jp/exhi_special_post/sengoku2017/。10:20ぐらいに会場に着いたが、展示ケースに必ず観覧客がいるぐらいの状況で、春休みのせいもあるのか若い人も結構多かった。伊達から毛利までの史料とともに、どういうわけか勝山館出土遺物まで並べられており盛りだくさん。ただ武将像・合戦図屏風・城郭図などの絵画史料は近世(もしくは近代)のものが多く、分国法も近世の写本で、やや物足りないところ。ただし三好長慶が水論を裁定した郡家財産区文書・上杉家文書などを実見することができ、とりわけ後者は様々なタイプの文書が並び、紙質・大きさなど興味深かった。天文24年の武家書札礼写は幕府奉行人の名前にカタカナが副えられており、幕府関係者が配慮したものと思われる。また陽明文庫蔵の近衛前久上杉謙信宛書状は、薬(鉄砲用)についてひたすら上物であることを強調しており爆笑ものだった。東博と同様にキャッチフレーズ付なのは仕方ないところだが、合戦に参加するという起請文が「一生忘れません」で、紙質・折りからみて密書と思われるものもありきたりで、どうせならもう少し考えて欲しかったところ。また永禄九年上杉輝虎願文は、花押はあったが、紙の使い方からみて案文だと思われる。その他に陽明文庫蔵「天文立花図」は花瓶の種類が記されており、経筒まであったのは驚いた。また16世紀のものという「松崎天神縁起絵巻」があり、当方が見た場面は手元の『続日本の絵巻』と余り相違ないように見えるのだが、全体がどうなのか気になるところ。なお常設展示では矢野荘・新見荘などの文書が並び、こちらはさすがにがら空きだったのでゆったりと見ることができた。新見の祐清殺害事件に関わる政所図・物品目録の紙質の悪さと、たまがき書状の立派さは少し気になるところ。門前での商売に関する起請文にも非常に薄い紙のものが見られ、やはり現物から得られる情報は多いことが実感される。