wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

進藤榮一『アメリカ帝国の終焉ー勃興するアジアと多極化世界』

本日は振替姫路、紀要二号はHPで公開されています。相変わらず往復のほとんどは爆睡しているが、昨日読み進めていた表題書を読了http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062884136。書店で見かけ、わりとグラフがたくさん載っていたので、現代史のこともあって衝動買いしたもの。タイトルになっている前半部分は、20世紀初頭のアメリカがグローバル化ポピュリズムの時代だったという評価は興味深かったが、「新移民の流入は、伝統的社会と文化摩擦を起こしながらも、皮膚の色とヨーロッパ文化という二つの共通項で結ばれ」といわれると、そもそもアメリカに共通の「伝統的社会」が存在したのか、黒人は無視してよいのかなど、現代アメリカの移民の主流は敵視するイスラム系とは異なるのではないか、など余りにも粗すぎる叙述が目立つ。後半はアジアでの中間層の勃興と緊密化する経済状況が示されており、それなりに説得力はある。ただ著者の故郷だという北海道十勝は農業の六次産業化でバラ色のように描かれているのだが、本当なのかという疑問は残り、日米同盟強化は経済的にも論外としても、日本経済はアジアで不可欠なものとして必要とされているのかはっきりしない。ただテロの発生モデル、十数万人の雇用者を有するという軍事民間会社の存在、1980~2014年に起きたアジア経済を全体、中国・日本・東南アジア・韓国と台湾・インドなどに細分化したさまざまなトレンドの変化、そのなかでの日本の没落と中国経済のすさまじさ、アジア諸国の貯蓄率の高さ(日本の倍以上)など、データは豊富でいろいろ使えそうなものはあり、その点では有益。