wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

河添房江『唐物の文化史』

本日は月曜日「外来文化と日本の歴史」の振り替え授業で、いわゆる「国風文化」の東アジア性。仕事のある非常勤講師は当然休講にせざるを得ないため講師控室はガラガラ、出席者は3限ということもあって前回とそう変わらず。電車読書のほうは本日の講義に関わる著書のある方の新著で、積ん読の順番を入れ替え昨日と本日で読了したもの。奈良時代正倉院から近世の阿蘭陀物にいたる、「唐物」に関する通史叙述https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?head=y&isbn=ISBN4-00-431477平清盛足利義満と「源氏物語」に関わるやや観念論的な叙述(そういうのを吹き込む輩はいたのだろうが)、陳和卿(ちんわきょう)など意味不明のルビ、上代建武の中興といった国文学用語はひっかかるが、講義の参考書として学生に示すものとしては水準を満たしている(14回のうち最初の2回と最後の2回以外は関係)。最後にまとめられた「尚古趣味」、唐物の日本的変容、和漢の文化の並立と融合のくり返しという視点も重要。これらは何れも同時代の「漢」の相対化としてはたらいているものだろう。なお講義のほうは昨年度のものを手直ししながら進めているが、本年度は15回になるため1回分は新規作成が必要となる。本書の最後に近世の唐物屋が近代の専門店に分化することが指摘されているが、それと大正期の百貨店の成立を合わせて何かできないだろうか。何か適当な参考書があればご教示ください。