wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐々木隆治『カール・マルクス』

先週も水・金は姫路ルーティンで、日曜日も京都に出かけたが、睡眠や別のものに当てていた時間もあり、電車読書の紹介は一週間ぶり。4月になって在庫が減ってきたこともあり、何となく衝動買いしてしまっていたものhttp://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480068897/。このところこの手のものからはすっかり遠ざかっているが、『資本論』の手頃な解説として興味深く読めた。現在は新全集の編集がまた進んでいるらしく、ある段階から評価が落ちていた晩期マルクスの読書ノートの研究が進み、その思想的模索が再評価されているとのこと。経済社会を人間と自然の物質代謝と捉え、資本主義をその攪乱・破壊と見なし、持続可能な物質代謝を可能にする生産力を実現した社会として未来社会を見通していたという。その上で、エコロジー問題、共同体の再評価、人種やエスニシティジェンダーによる分断を批判し、労働者階級と社会的マイノリティとの連帯によって対抗しようとしたと、評価される。労働運動の体制下と帝国主義の進展という1870年代の情勢にあわせて、理論活動を進めていったということなのだろう。今更お墨付きを得るというものでもないが、今の社会と向き合いながら、ものごとを考えることは必要不可欠なのだろう。著者の名前が著名な現代史研究者と似ているのが少し気になるが…。