wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

若森みどり『カール・ポランニーの経済学入門』

本日はクローズドの研究会での報告。周りの反応はいろいろだったが、自分なりには新たな発見があった。レジュメは昨晩遅くにようやく完成したため、取りかかれなかった電車読書の備忘。書店で見かけ、中世史研究者が贈与論などで引用される著者の名前に惹かれ衝動買いしたものhttp://www.heibonsha.co.jp/book/b201320.html。いちおう文庫版『経済と文明』は手元にあり、以前読んだような記憶があるが、著者によるとこれは晩年の著作で、むしろ理想を語るのが困難な現代から非市場経済に逃避したという誤った像を生み出す要因になったという。ポランニーはハンガリーユダヤ人家庭に生まれ、第一次大戦後の弾圧でオーストリアに亡命、社会民主党による「赤いウィーン」の敗北でイギリスへ亡命、第二次大戦後にアメリカ・コロンビア大学への招聘という激動の時代を過ごしたシュンペーターハイエクケインズと同時代人。マルクス主義新自由主義がいずれも経済システムが社会のすべての領域を支配するという経済決定論に立ち、権力の機能を民主的に制御して個人の自由を保護する制度を創出しようとせずに権力のない社会を理想とする点で共通していると批判。人間は完全な自由や共同体を現実の社会で実現することができないという謙虚な認識こそ、社会主義が必要とするもので、社会制度の不断の改良の原動力になるという。そうした観念を生み出した19世紀に成立した自己調整的市場経済というユートピアを批判するために、人間社会は市場(経済領域)・再分配(政治領域)・互酬(共同社会の領域)からなる複雑な社会であることを論じたもので、現在に跋扈する新自由主義の根源的な批判になるもので、すでに「悪い自由」として「公共の災害をひそかに私的利益に供して利潤を得る自由」いわゆる災害便乗型資本主義も挙げられていたということ。酔っぱらった頭では整理が難しいが、有益に思ったもの。リンクをはろうとして出てこなくていぶかしく思っていたら、著者名を若桑みどり
と勘違いしていた(笑)、