本日は中百舌鳥最終日。電車読書はネオリベへのやるせない想いから、ふと思い立って先日衝動買いしたもの。進歩せよを意味する「進化の呪い」、生存闘争と適者生存からくる「闘争の呪い」、自然の事実から導かれた人間社会も支配する規範だからとする「ダーウィンの呪い」の三つについて、ダーウィン本人の考え方とその受け止められ方のズレ、社会ダーウィニズムの代表とされるスペンサーの思想の実像、呪いを広めたサイエンス・ライター、その後の遺伝学の発展と優生思想、生態系管理と優生思想のつながり、アメリカにおける不妊手術・移民排除とナチス・ドイツへの影響が述べられ、優生学を推進したのがリベラルで進歩的とみなされた人々であったことが指摘される。啓蒙思想が植民地帝国主義・人種差別と表裏一体であったことについて、生物学・遺伝学の学史から照査した興味深いもの。最後に現代の課題としてゲノム編集のみが取りあげられ、遺伝子診断による分離主義的教育思想に触れないのはどうかと思うが、「善であるためには、悪でないことを祈りつつ、一つずつ善意のレンガを置いてみるしかない」、という社会変革における漸進主義的な取り組みの重要性を改めて確認しておきたい。