wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

岡野八代『ケアの倫理』

本日は中百舌鳥1限、金曜日は来週から(しかも徒歩圏内)なので、今週の外仕事は一段落。ただ久しぶりにしゃべると喉はボロボロに。そんな中で電車読書は一月に衝動買いしていたもの。子育て・介護など近代家族では女性の無償労働とされてきたケアについて、フェミニズムがいかにそれを「発見」し、「正義の倫理」(公)と「ケアの倫理」(私)という公私二元論への根源的批判から、新しい人間観と社会像、それを取り入れた平和論・環境正義論について論じたもの。ここの論者の背景も含めて研究史をたどる議論は大枠としてはわかりやすかったが、著作の解説部分は区切りが少なすぎて細切れの電車読書にはやや難解だった。最後はコロナ・パンデミックにおける小中高への全国一斉休校への批判。Twitter上の観測だが、共通テスト・定期試験・入試が終了して自らの身に降りかからない男性大学教員の間では、アベノマスクをこき下ろしていてもこちらは「唯一まとも」と評価する向きが高かった印象。今年正月の能登半島地震でも被災者のケアよりも全体状況を鑑みるべきというのが大勢のようで、著者のいう社会の実現にはほど遠いのがアカデミズムも含めた現状か・・・。

ケアの倫理 - 岩波書店