wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

家永真幸『台湾のアイデンティティ』

本日は新年初出勤、久しぶりの3コマで喉はボロボロ、その上に夜のリモート会議でヘロヘロだが、電車読書の備忘だけ残しておく。この講義のこともあって何冊かの類書から購入していたもの。民族構成について本日触れたように全体的には有益で、国民党独裁時代の台湾独立派・親人民共和国派の動向、民主化の過程と台湾人アイデンティティ、大陸との関係と現在に至る政治までまとめられて全体的には有益。なぜ安倍晋三が絶大な人気があるのかの説明はよくわからなかったが。ただ驚いたのはあとがきで、「左翼はよい人ではなくてはならないが、現実は必ずしもそうでないらしい」、かつての日本社会の「左翼」的な台湾観を疑問に感じ、台湾のことを学び直したいと思っている人を主要な読書の一人に想定、などの叙述。第三章で、日本に留学している親人民共和国派の支援に対して、台湾独立派に対する対応が冷淡であったという、70年前後の「左派論壇」を詳述しているのがそれに対応していると思われる。当方のような「左翼」がなぜ台湾ロビーに言及していないのかと感じたのは思うつぼかもしれないが、親中共世代など遙か昔の話しで屏風の中の世界。1981年生まれという著者が何を考えて叙述しているのか全く不明。こういうあとがきを書くとか、能登地震での政府の対応批判に対して能登の地形を理解しておらず8日後の状況は当たり前というXをリポストすると研究費が増える仕組みがあるのかもしれないが、異常としか思えないアカデミズムの世界。

文春新書『台湾のアイデンティティ 「中国」との相克の戦後史』家永真幸 | 新書 - 文藝春秋BOOKS