wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

小川幸司『世界史とは何か』

本日は組合執行委員会でお出かけ、表題書の読みさしを片付ける。松本サリン事件とその後の過熱報道、地下鉄サリン事件オウム真理教強制捜査の直後に、松本深志高校に転勤して世界史の授業で実践した考える世界史の授業と自主ゼミナールの経験と、著者の恩師である遅塚忠躬『史学概論』などをもとに、歴史実証・歴史解釈・歴史批評・歴史叙述・歴史対話・歴史創造という歴史実践の位相を導きだし、専門的訓練が必要な実証・解釈に対して批評以下は誰にでも開かれたものとし、教科書叙述からさまざまな問いを引き出し、対象にタブーを作らない・相互にいのちをリスペクトしあう・自分を相対化する意思を大切にする、という前提のもと、学習者が自分の叙述を練り上げ。相互に対話することで歴史創造につながるという。人種主義と国民国家、戦争違法化の歴史、民族浄化と強制追放として挙げられている事例は興味深く、高校教員をしながらの読書量は相当なもので、定期考査で「今回の範囲の授業を受けて、あなたが考えたことを自由に論述してください」という問題を課し、44頁の解答などは高校生が書いたとは思えないレベルのもので、感服するほかない。ただ先日某現役教員から歴史総合への不満を聞いたように、全国どの学校でも実践できるかというと疑問。当方もまた「人類の歴史」が待っている・・・。

世界史とは何か - 岩波書店