wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

「君たちはどう生きるか」

諸事情で手間取っていた本採点がようやく終わり(一つを除き追試あり)、表題の映画を鑑賞。結構なヒットになっており、サービスディということもあり、事前予約をしたが客はチラホラ。説明につじつまがあわないところもあるのだが、サイパン陥落・これから火の海などといった台詞から1944年が舞台で、その4年前に焼死した母と、その実妹で父の再婚相手となった身重の女性を追って、少年が疎開先のお屋敷にある謎の塔から異世界に紛れ込むという冒険活劇ファンタジーWikipediaの表現、なお同記事には当方の理解と事実関係のレベルで異なるものがある)。説明が最小限のためいろいろな解釈はあろうが、異世界が死のメタファーであるとともに、戦時体制とは異なる「楽園」の可能性を秘めた場所という両義性を有しているのだろう。主人公は後者の誘いをはねのけ現実世界に戻るのだが(ここまでは観ていれば予測可能な展開)、ラストはいただけなかった(以下、ネタバレ)。

 

何の被害が描かれることなく戦争は終わっており、軍需工場でぼろもうけしていた父の新しい家族とともに、何食わぬ顔で東京へ帰る。現実にそういった階層の連続性は顕著なのだが、余りにも身も蓋もなく、監督最後の作品としても残念。