wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

安成哲三『モンスーンの世界』

引き続き電車(バス)読書の備忘。何となくタイトルで衝動買いしていたもの。著者のもともとの研究はヒマラヤの氷河と気候の研究プロジェクトで、インドモンスーンの周期変動で学位論文、京大東南アジア研究センター・総合地球環境学研究所所長などの経歴を有し、本書も前半は気候変動とそれがつくりだした生態系に関する理系的解説、後半は風土と自然観・歴史から、杉原薫論にのったアジア経済の発展と、それが化石燃料による「人新世」をもたらしたとし、モンスーンアジア(インド亜大陸以西)・レベルによる安全保障と共同体の創出が提唱されている。気候変動が広域的な現象である以上、環境史もこのレベルで考えなければならないということがコンパクトに示されていて有益。リュックにほりこんでいたら汗で表紙がボロボロになってしまったが、置いておく価値はあるもの。それにしてもこのような議論をみると、ここ数年の動向で世界の今後は大きく変わるのだろう。本日は真っ赤に焼けたといのもあるが、当方は地球環境最優先の立場。

モンスーンの世界 -安成哲三 著|新書|中央公論新社