wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

田中康弘『完全版 日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?』

本日は中百舌鳥追試、帰路に5年ぶりに前宅周辺を歩く、新しいマンションができ、駅前の銀行がつぶれるなどいろいろ変化があった。電車読書は書店でみて衝動買いしていたもので、南は西表島のイノシシから、北は礼文島のトドまで、狩猟に携わる人々に同行し、獲物を仕留め、解体して、味わうまでのルポルタージュ。淡路に持っていったため背表紙がボロボロになってしまい、写真の多くが白黒なのは残念だが、猟銃・巻き狩り・わな猟などの手法、イノシシ・シカの生息域の拡大とウサギの減少といった生態系の変化、害獣駆除制度の実態など、いろいろ知ることが多く有益。なかでも狩猟者にシカが余り好まれないのは日本的な煮込みに適さず、刺身もあたり、ダニが多いためで、むしろ洋風的な煮込みにあうこと。タヌキが臭みにより猟師にもほとんど好まれていないというのは、中世を考えると興味深い。タヌキは京都の貴族にそこそこ貢納されていることから、干し肉などおそらく食し方が根本的に異なっており、かといってさほど美味でもないという条件で廃れたのではないか。

ヤマケイ文庫 完全版 日本人は、どんな肉を喰ってきたのか? | 山と溪谷社