昨日書けなかった電車読書の備忘を残しておく。2012年初版本は全く知らなかったが、大変興味深い内容。近代歴史学の移入がランケの影響を受けた帝国文科大学講師ドイツ人リースにはじまり、重野安繹と協力して国史学発足・史学会設立にも関与、弟子には独自研究が可能な日欧関係史をおこなわせ、そのうち幸田成友は大阪市史編纂の後に、オランダに留学し日欧通交史を研究史、増田四郎はその弟子とのこと。その他にも戦前の代表的な研究者が簡潔に紹介されているが、特に著者の関心は上原専禄にあるとのこと、ウィーン大学に留学し、帰国後は高岡高商で「富山売薬史史料集」2300頁を編纂(後任の同じくウィーン留学組の経済史研究者の力も大きかったようだが)。その後は原史料に基づくドイツ中世史研究およびドイツ史学史をすすめる。戦時体制には批判的スタンスをとりつつも、迎合派の単なる輸入ではなく日本人らしい西洋史研究、京都学派などとも呼応して、世界史・宗教別五大文化圏などを唱え、戦後につながっていくという。その他にも日本史の著作のあるものものもあり、大塚の紹介もある。近代歴史学の成り立ち、戦後へのつながりなど、なかなか状況は複雑なようでいろいろ勉強になった。