本日はルーティン姫路、兵庫県に転居したことを改めて実感する一日でもある。往路は三宮まで座れないこと、再来週の講義準備のため次のものに進む必要もあって、表題書を読了、著者の修道院シリーズの最終巻。ルネサンスの影響を受けた文献学の展開と、その頂点としての1681年に出版されたジョン・マピヨン『文書の形式について』の意義が詳述。同書は『ヨーロッパ中世古文書学』として訳出されており表題だけは知っていたが、書体・形式を集成することによって、偽造と誤写・誤読による改竄を区別するなど、非常に高度な史料批判を達成していたことがわかる。しかしデカルトによる方法的懐疑を軸とする自然哲学の衝撃は、存在論的真偽とは異質な考証的学問を押しつぶしてしまい、啓蒙史学が君臨することになり、マルクス主義もその延長線上にあるという。そのため啓蒙主義の影響がフランスほどではなかったドイツで考証学的歴史学が最初に講じられたとのこと。当方はマルクス主義的全体史と考証は両立すると認識しているが、文系的学問に対する偏見の根源がここまで遡るというのが理解できた。