wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

桃崎有一郎『室町の覇者足利義満』

本日は枚方の定期試験。例年通りアンケート結果が悪く、また反省文を書かされると思うと憂鬱…。このために雇われているとはいえ、いい加減カリキュラムを変えてほしいところ。そんな中で久しぶりに専門がらみの電車読書の備忘。三月刊行予定の原稿に何かあったらと購入してみたもの(結果的には特に接点はなし)。近年の義満論が周囲の状況によってつくられたという側面が強調されてるのに対し(小川剛生説が典型)、今谷説を継承するようにみえる自ら権力を構築していく主体性がこれでもかというほど強調されている。その中間的な早島説は参考文献にも挙げられていないが、それらの論者がどう反応するかは見もの。ただ観応の擾乱から義教まで一貫した論理で説明している点は強みで、天皇との関係性に規定された存在と捉える点で家永説の一側面を膨らませたものともいえる。もっとも著者自身は研究史の流れに乗ることは意図的に嫌っているように見え独創性が強調される。ただ史料編纂事業も含め、多くの蓄積の上にあることは一般書だけにより自覚的であってほしいところ。

室町の覇者 足利義満 (ちくま新書) リンクを追加しました