wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

石見徹『「幸福な日本」の経済学』

本日は某大学と団交。今更ながらのちゃぶ台返しに加え、問題点を追求したら「質問された学生」状態で黙り込んでしまう有様で、徒労感だけが残る。そんななか電車読書のほうは表題書を読了。書店で見かけ、タイトルといくつかの国際比較の統計資料につられ衝動買いしてしまったものhttp://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062586665。日本人の自意識としての幸福度と国際指標としての幸福度のギャップをもとに、貧困と格差を主に世代間の問題として捉える。その原因となった新自由主義を富裕層からの意図的政策というより、成長鈍化とグローバル化による必然的結果としての側面を強調。打開策として福祉国家の再建が掲げられ、富裕層の逃避を避けるためには消費税の増税が必要で、そのためには信頼される政府の構築が不可欠であるとする。統計資料には有益なものはあったが、全体としては何の解決策にもならないエッセイ集。一文をあげると、年金問題について、「いずれにしても、現在の基金残高から現役世代の拠出分を控除した上で、年金世代への支払いに足りるかどうかよく分からない。年金機構などには、試算する上で必要なデータが備わっているだろうが、公表されることはないだろう。公表すると、現行の制度を否定するような議論が沸き上がるかもしれないからである」(p189)といったのりで、「かもしれない」と、省庁・富裕層の立場にいかに配慮するかが大前提となってしまっている。さすがに森友問題には批判的なようだが、それも政治の信頼性を損ねたためで、基調は国民の責任を強調する「一億総懺悔論」。