wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

木畑洋一『二〇世紀の歴史』

本日は非常勤先で突然の雨に降られたが、図書館から控室への移動の時のみであとは回復した。電車読書のほうは別の日の講義科目に関するもの。第一次大戦からソ連崩壊までを「短い20世紀」と捉えるホブズホームに対して、著者は帝国主義の時代が始まった1870年代から、ソ連「帝国」の崩壊・ナミビアの独立・南アフリカアパルトヘイト体制の終結する1990年代初めまでを「長い20世紀」と捉えて、帝国主義の盛衰という観点から叙述したもの。第一章「支配ー被支配関係の広がり」では帝国主義が世界を覆う過程とそこで行われた非対照的な暴力(ドイツ領東アフリカ、イギリスースーダン、日本ー台湾、アメリカーフィリピンなど)について。第二章「帝国世界動揺の開始」では第一次大戦が帝国の総力戦として行われた実像とそこから登場した民族自決論について。第三章「帝国世界再編をめぐる攻防」では世界恐慌から第二次大戦に至る過程と大量殺戮について。第四章「帝国世界の解体」では脱植民地化の過程とそこでの暴力、さらに冷戦終結と帝国による植民地支配の解体について、簡潔に触れられるとともに、暴力(~人殺害といった言葉がほぼ毎ページに登場)の具体像が示され20世紀という時代のある側面が非常によくわかるもので、講義資料作成にも参考になる。また各章には定点観測として、イギリス・日本という帝国に属し加害者側であるとともに半植民地状況にもおかれていたアイルランド・沖縄および、イギリス人・ブール人(アフリカーナ)・黒人のもとアパルトヘイト体制を構築するとともに周囲に帝国的に振る舞った南アフリカについて、各時期の状況が触れられておりこれも有益。なお終章「長い二〇世紀」を後にでは、帝国的様相は各地に残りながらも人々の平等性についての国際的な規範は完全に変化したこと、21世紀の帝国論は有効な考え方ではないとされ、暴力が拡大する時代でもなく、暴力的契機をさらに押さえ込み、平等と平和の時代にすることが私たちには求められていると締めくくられている。この間の日本政府・閣僚の発言には絶望的にもなるが、国際的規範は別にあることは明らかでそこに明るい未来を展望したいものhttp://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1409/sin_k783.html。図書館で見た雑誌で拙著が変なレッテル貼りをされているのも見てしまった。あの「左翼小児病」は何とかならないものか、運動の価値をおとしめているだけ。無視するのも癪だがどうしたものか・・・。