wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

「忘れ得ぬ他者」

授業準備のためにつまみ読みした三谷博『明治維新ナショナリズム』・『明治維新を考える』から学んだ概念。近世日本における「国学」の登場をナショナリズムとした上で、世界帝国である中華帝国の辺境にある日本が高度な学問的著述をなすまで成長したことで、価値を否定しようとしながら、否定しきれない「忘れ得ぬ他者」として中国が改めて意識され、それとの対抗で「我が祖国」が創られたとする。これは19世紀アメリカにとってのイギリス、ドイツ語圏にとってのフランス、植民地化された地域にとっての旧宗主国、現代のすべての国のとってのアメリカなどにも認められるもので、愛憎併立の両義的な存在であり、かつ、しばしば劣等感を懐く側が強く意識しながら、先方は無意識でいるという非対称性を示すという。長期にわたる国際関係と意識をみるうえで有効な概念と感じたので、書き留めておく。ついにまた暑い夏がやってきた。講義があと2週間でその後に試験が待っている。何とか乗り切らなければならない。