wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

山下祐介『地域学入門』

本日はルーティン姫路。久しぶりに作業用の本を3冊抱えて出かけたが、ちょうど勤務時間でまるまる作業が終わる。ただ来週は一日在宅勤務になるので、重たい思いをする必要はなかったのかもしれない。今週は学祭休みと代休が続いたこともあって久しぶりの電車読書の備忘。弘前大学での経験をもとに「地方消滅」・人口減少に発言を続けている著者の最新作ということで衝動買いしていたもの。四章立てのうちⅠ生命の章・Ⅱ社会の章・Ⅲ歴史と文化の賞は、青森県域を事例にした伝統社会の形成と構造および地域の調べ方について紹介したもの。漢字と和語の語源論をごっちゃにしている・草分け百姓的な村落像を普遍化しすぎ・神仏を中央からの下降を軸に理解、といった点は気になったが、景観・交通も含めて押さえるべきところは押さえられている。Ⅳ変容の章は、明治維新以後、とりわけ高度経済成長を経て地域がかすんでしまい、強い国家を他力本願な弱者が希求したことで強烈なナショナリズムが台頭し、コスモポリタニズムもコインの裏表に過ぎないとする。それに対抗できるのは地域ナショナリズムであるとし、抵抗としての地域学が提唱される。当方も姫路に通い始めてからより地域についてはより深く考えるようになり、可能性も見いだしている一方で、安易な地域ナショナリズムが大阪の惨状にしかならないのも目のあたりにしている。その点で中央(国家)からの方向性を軸に組み立てる方法にはやはり違和感を感じざるを得ない。

筑摩書房 地域学入門 / 山下 祐介 著