wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

和田春樹『北朝鮮現代史』

昨晩思いがけないことがあった上に、今朝は鳩の巣作り阻止に何度も起こされながら大わらわ、夜は年寄のご機嫌伺いと続き、帰りの電車は寝過ごしそうになる。そういうわけで頭は働いていないが、今さらながら購入してみた電車読書の備忘を残すhttp://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1204/sin_k644.html。まえがきで史料状況が説明され、1961年までは一次史料で分析することが可能だが、それ以後の北朝鮮は内部情報を完全に秘匿していることに成功している例外的な国家とし、61年までの歴史認識でモデルをつくり、それ以後は公式資料によると断られている。その言葉通り前半部分の叙述は具体的で興味深く、60年代の遊撃隊国家期もベトナム戦争に呼応した韓国への攻勢と迷惑がる北ベトナムの状況など、よく知られている韓国の南ベトナム派兵とあわせて両分断国家の関係性について勉強になった。その一方で80年代以後は事実が羅列されているだけで、際だった分析はみられない。確かに一次史料の欠落・拉致問題に典型的な日本政府の態度の急変・その背景にあるアメリカの政策の意図など解明されていない問題が多数あることは否めず、やむを得ないところはあるだろう。とはいえ97年に亡命した党書記ファンジャンヨプが貴重な証言を避けたと批判しているのと同じく、その時期の日朝関係に深く関わり実際に何度も渡航している著者も全ての情報を語ってはいないと感じた。なお下斗米伸夫の研究は「あまりにも誤りが多い」と指摘しているところは、こちらの感じた違和感との関係で気になるところ。