wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

久保亨『社会主義への挑戦』

岩波新書シリーズ中国近現代史も4冊目で、1945年から1971年の大陸中国の動向を扱ったもの。戦後直後の思想的活況状況、国民党の経済失政、共産党政権奪取直後の多様性(多数の人々が国民党を見捨てた結果)、朝鮮戦争による戦時共産主義化と他党派の排除、スターリン批判を受けた「百花斉放、百家争鳴」から一転しての反「右派」闘争による55万人以上の大弾圧、煉瓦で作った溶鉱炉や稲の密植など無謀な「大躍進」政策の無残な失敗、一時的な調整政策を経て再び「文化大革命」の大混乱、中ソ対立の深刻化とベトナム戦争の泥沼化による米中国交正常化という過程がコンパクトに叙述されている。授業でもかねがね中国共産党は政権奪取までは鮮やかなのだが、その後はろくなことはしていないと紹介しているがまさにその通りで、その中心に毛沢東がいたことが示されている。その一方で俗説的に紹介されているような皇帝ではなく、共産党内部では常に少数派で、急進路線に対する揺り戻しが働いている点は興味深いところ。失脚・不可解な死は見られるものの、ソ連スターリンほどの幹部「大粛正」はなかったことが要因のようだ。信頼できる史料がないためかほとんど触れられていない、もう一方の雄である周恩来がどのように立ち回っていたかが鍵になるのだろう。また文革下放政策を一体のものと思っていたが、むしろ紅衛兵組織が日本の学生運動のように制御できないほどセクト化したため、ガス抜きのために取られたものであることは初めて知った。文革に対する抵抗も各地であったようで、共産党一党支配の中で息づいているさまざまな多様性がよく理解でき、現代中国を見る上でも参考になる好著といえるhttp://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1101/sin_k567.html。旅行・研究会モードから論文モードに戻らなければならないのだが、原発事故が落ち着いていないこともあって、なかなかそういう気分になれない。しょうもない書き込みの原因になった雑用もまだ終わっておらず、4月6日の最初の講義まであとわずかになってしまった。何とか気合いを入れ直さないといけない。なおトラックバックは上げると毎回のように変なものが入るため、こちらも承認制にする。