wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

下斗米伸夫『日本冷戦史』

本日夜は自治体史に向けての研究会。先週は自分の報告でボロボロだったのだが、今日は報告を聞く方だったのでいろいろ勉強させてもらった。やはり地域の歴史的個性というのは興味深い。電車読書のほうは戦後史に向けて購入した表題書を読了するhttp://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/9/0242840.html。著者はロシア史の専門家で旧ソ連アーカイブ資料を駆使して、1945年の日本の終戦工作から鳩山内閣による日ソ交渉までが描かれる。アメリカの日本管理をソ連が簡単に認めたのは、ルーマニアブルガリア北朝鮮で産出されるウラン確保が核開発に必要だったためによる地政学的バーターだった点、ソ連軍中尉だった金日成が権力を掌握するのと外務官僚吉田茂が首相になったのがほぼ同時期で何れも通訳的存在と評価できる点、中国では国民党がもともとソ連と提携し共産党には親米派が多数含まれていたが、それが共産党の勝利によって入れ替わっていく構造、イギリスが中国共産党政権を早くに承認し中ソ離反を図っていたこと、中国共産党内部には朝鮮戦争参戦にかなり消極的な勢力があり、イギリスの進める国連承認が実現しているとかなり情勢が異なっていたこと、スターリンがかなり細かいところまで口出ししていたこと、日ソ交渉における日本側のバタバタ感(それぞれの不一致、フルシチョフの地位を理解していなかった)など、興味深い事実がいろいろ指摘されていた。その一方でかなりの紙数を割いて紹介されている日本共産党中国共産党ソ連との関係史は、余りにも細かすぎてついていけなかった。共産党武装闘争路線に入るまでの経緯についてはいろいろ勉強になったが、その後の北京機関と幹部の暗闘は所詮手の上で踊らされていたに過ぎず、「冷戦史」というタイトルでここまで論じる必要があったとは思えない。それよりもアメリカ側からみた冷戦研究とのつきあわせた全体像をもう少し明確にしてほしかったところ。明日は珍しく休み。授業準備を早く終わらせて12月の報告づくりに充てたいのが・・・。