wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

大瀧雅之『平成不況の本質』

今日も試験で、例年より少ないとはいえ200以上はあり、採点を始めるには気合いがいるところ。そういうわけで何となく衝動買いしてしまった電車読書の整理をしておくhttp://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1112/sin_k627.htmlケインズ主義的近代経済学の立場からマクロ経済理論に基づいて日本経済の推移を分析し、不況の要因を対外直接投資による国内需要の減少と三度にわたる金融危機の消費需要への抑制的効果に求め、新自由主義的な経済成長至上主義・デフレ不況論(インフレ・ターゲット論)・株主主権論・「構造改革」による投機の奨励・郵政民営化・新日銀法といった主張・政策を批判し、極度に規格化された偏差値教育の改革・技術の継承・公正な所得再分配の必要性を主張する。方向性としては至極常識的ともいえるが、新古典派経済学の立論の基礎となる数値化のいい加減さを指摘しながら論じているところが新鮮。著者は現在は東大社研教授ということだが、長らく日本政策投資銀行設備投資研究所に属して、著書の中には日経・経済図書文化賞を受賞したものもある実証的研究者のようで、このような立場からの提言すら聞く耳を持たず全く逆の政策を推進する政府・マスコミの現状はあまりにもひどすぎる。さらにはそうした規格化による社会の破壊を極限まで進めようという都市首長が主導権を握るとなると、日本社会の未来は絶望的。今度の京都市長選でここ一連の流れから現職の敗戦という結果になるのがかすかな希望か?