wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『日本中世魚介類消費の研究ー一五世紀山科家の日記からー』

かなり前に頂いておきながら、積んだままでほったらかしにしており、本日ようやく目を通すことができた。この数ヶ月じっくり勉強する暇がなかったことが、改めて実感させられる(当然この間に読んだ研究論文はいくつかあるが、当ブログでは備忘として必要を感じない限り紹介はしていない)。一五世紀に内蔵頭を世襲して、内蔵寮領・御厨子所供御人を支配した山科家は、当主の日記と家司の日記双方がかなり伝来しており、内容もモノ史料に関する記事が大変豊富に残されている。拙稿「中世京都のクラと土倉」では『教言卿記』から土蔵の建築過程を検討したが、本書は琵琶湖博物館の共同研究として魚介類の関する史料を集成し、橋本道範・澁谷一成・春田直紀各氏による考察が付されているhttp://www.lbm.go.jp/publish/houkoku.html。登場する多様な魚介類、それぞれの季節性、貢納・売買・飲食などの契機、生・塩干・荒巻などの種別、容器と数詞の有無、価格など興味深い事例が紹介されている。一五世紀の社会構造を考える上で実に貴重なデータとなっており、生産と消費の連関性については自身もこれから追求したいところ。