wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

天野忠幸『松永久秀と下剋上』

本日はルーティン姫路。当方のミスがきっかけで…。疲れた、やはり組織には向かないようだ、誰かに骨を拾ってもらえないだろうか…。そんなこんなで帰路もグッタリ寝込んでしまったが、表題書をようやく読了http://www.heibonsha.co.jp/book/b356715.html三好政権の研究から戦国から信長期の畿内政治史へと幅を広げていった著者による、松永久秀の生涯をたどりながら、室町的家格秩序がいかにして崩れ・覆されていったのかを叙述したもの。通俗的には戦国の梟雄扱いの久秀が自らを取り立てた三好氏には一貫して中世を尽くしており、独裁的な統一者として捉えられる信長が、将軍権威を軸とした諸勢力の合従連衡のなかの一プレーヤーに過ぎないことが、著者および近年の研究を踏まえて、わかりやすく叙述されている(当方は熟知しているわけではないが…)。ただこのように問題を立ててしまうと、将軍権威を相対化するためには天皇を持ち出すしかないという、身も蓋もない結論になってしまうのはどうなのか。個人的にはすんなりと受け入れがたい感情が残らざるを得ないが、せめてそのことの持つ意味については、やはり考えてほしいとは思う。