wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』下

本日は枚方10回目。100分授業で14回となり、地震休講で13回になったため、あと3回で終えなければならなくなり、今後の構成が考えどころ。そんななか昨日ようやく読了した電車読書の備忘を簡単にhttp://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309226729/。上巻に続き、人間が生み出した宗教・科学・資本主義が、世界の拡大・人類の「発展」にもたらした状況が縦横に叙述され、現代の戦争による死者が激減したという意味での「平和」な状況が示される。しかしそこで一転して終章前では格差拡大・環境破壊・人種差別・少数民族絶滅などを生み出した状況に鑑み、「文明は人間を幸福にしたのか」という問が提起され、最終章「超ホモ・サピエンスの時代」では遺伝子組み換えによる新生物の創造、「非死」の領域に踏み込みつつある現代科学の様相が示され、「神になる寸前で、永遠の若さばかりか、創造と破壊の神聖な能力さえも手に入れかけている」と警鐘が鳴らされている。訳書あとがきによると著者はオックスフォード大学で博士号を取得した歴史学プロパーらしいが、個別の事実の整理というよりも、人類という知的生命体の地球上における拡大過程として通覧することで、未来を見通した著書となっている。訳者(柴田裕之氏)は翻訳専門の方のようだが、専門用語を駆使したスタイルではないため、読みやすい訳になっているように感じた。秋の講義は事実の理解に重点をおいているため、どこまで採り入れられるか微妙だが、その視点は勉強にはなった。