wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

塚田穂高編『徹底検証日本の右傾化』

本日は非常勤二日目。京阪が「乗客多数」で遅延しバスに乗り遅れたが、何とか無事に終える。二年生前期配当だが、昨年後期一年生のアンケート結果が反省文を書かされるぐらい悪かったため、昨年度の半数程度か。少ない方が諸々の処理が楽でよいのだが…(月曜講義は200人超え・史料講読も初回出席は昨年のほぼ倍の19名だった)。そんなこんなで電車読書のほうは、Twitterをみている書き手が複数いたこともあって衝動買いしてしまったものを読了http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016492/。「壊れる社会」「政治と市民」「国家と教育」「家族と女性」「言論と報道」「蠢動する宗教」の五部構成で、本文382頁を21人が執筆。そのため個々の担当は短く、現象をなぞったものとしてはまとまっているが、背景への突っ込みは弱い気がした。また政治学者の民主党が台頭したから自民党が右傾化しただけという議論は余りにも楽観的で、前の菅原某もそうだったが、こういう枠組みでしか物事が捉えられない学問体系なのか疑問。それぞれの論者の立ち位置についても十分に整理されておらず、編者の文章も全体の総論にはなっていない気がした。また朝日編集委員が「『吉田証言』検証報道」に触れているが、有識者委員会の人選などなぜそういう形になったのか社内力学に触れられておらず非常に不満。分野的には経済関係が弱く、とりわけ財界人の動向が土光・松下あたりから現在までの系譜の分析が欲しかったところで、結局本流には踏み込めていないような気がする。神奈川日本会議の副運営委員長は団塊世代の日産早期退職だそうで、そこに流れる底流を無視して、「WGIP」など際物議論いじりをしても問題の本質には迫れないのではないか。