wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

島泰三『ヒトー異端のサルの1億年』

本日は赤穂で近世絵図調査。既存の刊本の誤読が判明するとともに、新出の絵図に従来知られていなかった情報を発見し有意義な機会となった。往復四時間(うち単独行3+1/4h)のうちかなりの部分は寝てしまっていたとはいえ、秋の講義に向けて衝動買いした表題書の残りを読了http://www.chuko.co.jp/shinsho/2016/08/102390.html。雌雄の大きさと集団行動の相違、種の進化にとって重要な固有の食糧確保、体格も大きく優れた運動能力を有する原人・ネアンデルタール人と、魚介食からはじまった無毛で華奢なホモ・サピエンスとの相違など(DNA組み合わせは前者の男性と後者の女性のみであるという)、改めて色々整理することができた。ただ書店で手に取ったときから危惧していた日本部分はかなりトンデモなレベル。ミトコンドリアDNAの通常の系譜ではハロ・グループ単位にするところを、わざわざ日本人・韓国人・オランダ人などと記し、あたかも単一のDNAを有しているような誤解を与える表をあえてつくり(205頁、別の箇所ではDNAの多様性を文章化しているので、図表は意図的な作為と考えられる)、たまたまユーラシア大陸の東端に位置したに過ぎない日本列島を「ホモ・サピエンスの長い旅の最終目的地」であるかのように記す。さらにその形質を縄文人にストレートに結びつけた上で、東南アジアで発生したとする犬との関わりについて一埋葬事例からあたかも特別な関係があるかに表現される(そもそも西方の犬は東南アジアから伝わったのだろうか)。さらに縄文人の平和を過度に強調する一方で、通常は大きな意味を与えられる弥生農耕と渡来人の影響を過小評価して日本列島の住民の特性として「和」を強調し、白村江と1945年を世界帝国への敗北として同一視し、特に後者をヨーロッパ文明の残虐性による原爆投下として総括。近年はあふれているとはいえ、どうしようもない論理。サル研究者はまともな方が多いと思っていたが、大間違いだったというのが最後のオチ…。この方面には疎かったがどうも著者は東大全共闘のえらいさんらしく、よくあるパターンの転向のよう。どうりで『翼の王国』に連載ができたはずだ。当方のミスとはいえ無駄金を使ったものだ。昨日はそれなりに自信をがあった報告が木っ端微塵に。しびれる緊張があるのはありがたいとはいえ、12月に向けて益々仕事が重くなってきたのも事実。とにかく気を引き締めなければならない。