wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

池内了『科学者と戦争』

本日は15週目講義。ちょうど地域史が戦時体制のところまできたので、大学という「空気」がこの30年でいかに変わったかという話をしたが、カードを見る限り余り反応はなかったよう。電車読書のほうもA4サイズ本と併用していたこともあって飛び飛びになってしまったがようやく読了。よく平和運動がらみで名前を見かけており、理系に出講していることもあって衝動買いしたものhttps://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/43/1/4316110.html。歴史を振り返り大日本帝国ナチスに対する科学者の対応について述べた上で、戦後日本における科学者と軍事技術との関係を概観、基礎的科学技術が軍事にも民生にも使えるというデュアアルユース問題について防衛予算の提供を「研究者版経済的徴兵制」と批判し軍による研究費提供は受け入れるべきではないとし、軍事化した科学が公開・自由などの原則を阻害するもので戦争で発達するのは科学ではなく膨大な費用を投入された技術の実用化に過ぎないとする。現在の理系研究者をとりまいている「空気」の内実を的確に解説し、それに抗うことを積極的に呼びかけたもの。当方の講義でも戦争と科学技術との関係、とりわけコンピューターやインターネットがどのように開発されたのか説明するようにしており、学生レベルでは割と素直な反応が返ってくると感じている。その一方で理系研究者とりわけ工学・情報系に著者の議論がどれだけ受け入れられるかははなはだ心許ない。問題がお金の出所(文教費か軍事費か)ということになると、政治的にどれだけ制御できるかということになるが、その点で今度の東京都知事選の行方ははなはだ気にかかるところ。今の「空気」で小池勝利ということになると、安倍政権も2020年まで暴走する可能性がかなり高くなるのではないか。このところのNHKの動き・沖縄高江の情勢などをみても今後はもはや「改憲」などという「平和」な政策すらとられないまま、なし崩し的に「壊憲」へと向かっていくような気がする。すでにTwitter上には敗北の原因すら飛び交う始末。何とか巻き返しを期待したいところ。