wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

青野利彦『冷戦史』(上)

昨日読了した電車読書の備忘。今年度の講義には間に合わなかったが、来年に向けて購入していたもの。上巻264頁は、イデオロギー国家としての米ソの登場と世界大戦から説き起こして、キューバ危機とケネディ暗殺・フルシチョフ失脚まで。わかりやすい筆致で米ソのみならず、西欧諸国・中国・第三世界などの様々なアクターの動向を踏まえて最新の研究状況を紹介しながら説明されており有益。途中でベヴィンが主語として話が展開されており、あわてて何頁か戻ると英外相で、アメリカが孤立主義を捨てて欧州へのコミットを進める上で、大きな役割を果たしたとのこと。英仏の植民地帝国維持路線と「自由」をすすめるアメリカとの微妙な関係が、その後も含めて重要なファクターになっていることが理解できた。欲を言えば新しい図表が欲しかったところだが。なおソ連が対日占領管理機構より、ルーマニアブルガリアを優先したのは、下斗米伸夫説によりウランから説明していたのだが、本書でも言及がなく気になるところ。

冷戦史(上) -青野利彦 著|新書|中央公論新社