wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

渡邊啓貴『アメリカとヨーロッパ』

本日は千里山。大教室は暖房(誰かがつけたはずだが、暑くても誰も消さない)、帰りの阪急も暖房で暑苦しく、地下鉄は冷房で寒すぎ。そんななか昨日読み進めた電車読書の残りを読了。火曜日の講義の関係で衝動買いしてしまった第二次大戦後の米欧関係史http://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/08/102504.html。著者の専門はもともとフランス現代史らしく、冷戦期の英・仏・西独関係についてはいろいろ勉強になり、米ソの緊張関係の緩和がむしろ米欧関係をギクシャクさせるというダイナミズムも興味深いところ。ただ冷戦後の叙述はブレブレで、ブッシュ子・トランプのような急進的単独行動を批判しつつも、アメリカの世界の警察官的役割を期待しているようなのだが、その具体像はみえなかった。また「惨劇」の大安売りでソマリアはまだしも、ムバラク政権の崩壊まで「惨劇」扱いなのは意味不明で、そのわりにパレスチナイラク・シリアは「混乱」で片付けられているのはいかがなものか。今年から100分・14回になり、今のペースだと冷戦終結までできるかどうかというところだが、まだ枠組みができあがっていないように思えた。なお集団的自衛権・TPP断固支持らしく、国際関係論の学者は理論的前提に組み込まれてしまっていて、疑うという意識ははなからないようだ。