wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐々木雄一『近代日本外交史』

本日は枚方3コマ。出るときは降っていなかったが自転車を止め徒歩経路を利用、案の定帰路は大雨だったが、15分歩くとズボンの裾はびしょ濡れ、どちらが正解だったか・・・。電車読書は講義準備で順番を入れ替え表題書。本文214頁でペリー来航からポツダム宣言受諾まで描くのは、それなりの経過説明は満州事変まで。ただ第一次大戦までの帝国主義外交の規範に則り行動した時期の特徴を外務次官・有力国の大使や公使・外務大臣を務めたプロ外交官から捉えた点(著者の専門らしい)、第一次大戦による国際規範の変化(露骨な帝国主義的行動の抑制)を経た原敬内閣の段階で、満蒙に関する柔軟な政策選択への転換、国際社会に対する理解や信頼を国内に根付かせる努力を欠いたことが、満州事変以後の展開を招いたとの指摘は興味深い。とりわけ後者は近年の細切れな個別研究の進展に対して、陸軍・海軍・世論などから妥協点が限られていたことを提示し、かつての15年戦争ではないが長期的な視座を示したものとしてありがたい。図版も一つ早速使わせていただく。

近代日本外交史 -佐々木雄一 著|新書|中央公論新社