wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

三枝暁子『日本中世の民衆世界』

本日は枚方3コマ。この仕事は来年も続くが喉にはこたえる。電車読書はさすがにこれぐらいはと思い購入していたもの。著者が研究対象にしている北野神人について、その前史となる西京の成立から、中世の麹業の成立と独占、戦国期の武家被官化を経て、近世に神職としての神人身分の存続、近代の神仏分離以後の状況から現代までを逐ったもの。同時代の文献史料だけでなく、伝承されている由緒を歴史的背景とあわせてその実在可能性を大胆に解釈する。麹業の発生を干していた稲が濡れたカビとする由緒は、和泉黒鳥にもあったはずでどうかと思わないでもないが全体としては評価されるべき方法。著名な応永の請文が神人集団に伝えられていたというのは重要な指摘で、近世に神職化したというのは大山崎でもそのようで、そちらの生業ははっきりしないようだが北野はどうなのだろうか。なお著者が足繁く通い口絵写真にも掲載されている川井家は保存されず解体されてしまう。この点は客観的叙述だけでなく著者の見解も聞きたかったところ。

日本中世の民衆世界 - 岩波書店