wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

オズワルド・シュミッツ『人新世の科学』(日浦勉訳)

本日はルーティン姫路。出勤途中で腹痛に見舞われ寝ることができず、一日中ヘロヘロで仕事を終える。いろいろ集中力にも欠けていて、火曜日に終えるはずだった表題書をカバンに移し忘れ(予備は入れていた)、本日ようやく読了。著者はアメリカの生態学者で、副題が「ニュー・エコロジーがひらく地平」とあるように、ポートフォリオサプライチェーンなど経済学の用語を取り入れ、自然の経済と人間の経済を対比し融合させ、実践するという方法論を述べたもの。経済的合理性を強調することで、人間生活と生態系との調和をめざすという、いかにもアメリカ的発想という感じはするが、議論は説得的で、実例としてあげられた大西洋マダラ漁の崩壊過程も興味深いもの。レアメタル採掘の問題点と改善の取り組みも勉強になった。ただ最後に生態学・経済学・社会科学・政治学・哲学・神学・地理学などを統合して、生態学の研究と人類の研究を融合させた創造的な新しい方法を進める必要があるとするなかに、歴史学が明示されていないのは残念。なお訳者も東大の生態学者で翻訳はよみやすく、輸入飼料の使用を低減させる宮城県の取り組みが2011年の草地放射能汚染で中断したことも、あとがきで触れられている。人新世の科学 - 岩波書店