wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

吉野秋二『古代の食生活』

本日は姫路で編集中の紀要校正の受け取り。ただ印刷屋が来るのが午後だったので、余った有給を一時間消化。おかげで朝も爆睡することなく読みさしの表題書を読了。近年の問題関心と回展がらみで衝動買いしていたもの。確かに労働編制のあり方の説明はわかりやすく、乞食論としても非常に勉強になった、最後に渋沢敬三を取り上げた上での網野批判も実証的。とはいえ「奈良・平安時代に関していえば、おそらく、同時代の世界のどの地域よりも、日本列島は食生活を具体的かつ全体的に復元する条件に恵まれている」と最初に記すのはどうなのか。文書・木簡に記されるのはあくまで米・酒の日当としての支給の話でどう調理されていたのかとは別問題。途中で平城京における飯・米の販売、近代の事例を援用した残飯市場の可能性は興味深いが(根拠となった個別論文も読まなければならない)、地位によって支給量が異なる下級官人や貴族の従者たちはそれぞれ自炊していたのか、大釜で炊飯していたのなら量の差はどう考慮されたのか、都市の場合は燃料確保の問題もある(以前観たスラム街の映画では自炊はされない)。最後に『「百姓が自宅でどのような食事をとっていたのか、官司や寺院での勤務した際の食事と同じだったのか」などという問いに答えるのは簡単ではない』とあるが、後者が説明されているようにはみえなかった。

古代の食生活 - 株式会社 吉川弘文館 安政4年(1857)創業、歴史学中心の人文書出版社