wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

湯澤規子『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』

本日は千里山、教員・学生とも自主休講があったようでいつもより人出は少なかったが、電車はそれなりで破局も近いか・・・。そんな中で積ん読の枯渇もあって購入した表題書を読了。著者は同書の裏表紙によると、筑波の歴史・人類学研究科の出身で、「『生きる』をテーマに地理学、歴史学、経済学の視点から、当たり前の日常を問い直すフィールドワークを重ねている」とのことで、『胃袋の近代』は未読だが気になっていたもの。本書も日本における歴史、特に近代の都市爆発によって従来の肥料としての循環が不可能になり、コレラなど衛生問題、生野菜食の普及ともあいまって、「汚物」として下水道処理される過程、米軍の指示による沖縄での水洗トイレの普及といった、歴史的経過、日本および世界の「トイレットペーパー」以前、水木しげるゴーギャンのみた南太平洋地域でのウンコに照射させた「文明」批評、と幅広い観点からまとめられ勉強になるとともに、フットワークの軽さも感じられる。ただ記紀および人名と「雪隠」をめぐる民俗事例(トイレ考古学の成果を参照すると成立はかなり降る)から中世を「畏怖」され「信仰」されという解釈、葉の利用から「蕗」から「拭き」に・「葛」から「糞」へという語源論(逆だろう)など、違和感を感じる部分もあった。

筑摩書房 ウンコはどこから来て、どこへ行くのか ─人糞地理学ことはじめ / 湯澤 規子 著