wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

田野大輔『ファシズムの教室』

電車読書ではないのだが、遠隔授業準備のつかの間の合間に読了。著者がおこなってきた、「普通の人間が残虐な行動に走るのはなぜか」を題材とする受講者250人の「社会意識論」中で2回分をかけて実施している「ファシズムの体験授業」の実践報告。受講者に同一行動・服装・シンボルなどによって集団行動の快楽を生み出させるととともに、権威への服従によって道具的状態となって自身の行動の結果に責任を感じなくさせるという体験を味合わせるというもの。実践は簡単なように記述されているが、現実には250人を動かすにはかなりの準備とテクニックが必要で、当方には到底まねできるものではない。この実践がマスコミに周知されてからクレームが入り、打ち切ることになったのは残念で、「社会主義」論などナチスの主要なトピックについての解説が加えられているのも有益。ただ受講者が感じる集団行動への忌避が、「冷笑」を助長する可能性については触れられていなかった。そのあたりファシズム=疑似革命(革命は肯定的評価)という時代からは隔絶しているというべきか。

ファシズムの教室 - 株式会社 大月書店 憲法と同い年