wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

檀上寛『陸海の交錯』

本日はルーティン姫路。相変わらずヘロヘロになりながら何とか終業時間を迎える。明石まで座れなかったこともあり、表題書をようやく読了。中国の歴史シリーズの四冊目で、これまでの中華・海・草原の交錯として明朝史を描いたもの。これまで不勉強で余り意識していなかったのだが、元末明初は中国史的感覚でいうと経済がかなり落ち込んでいたため、絶対帝政により国家が社会の厳格に統制し、現物経済の維持と身分序列の固定化が実現できていたのだという。しかし内向きに見える朝貢体制が、逆に中華世界システムを創り出すことによって、商業化と都市化がすすみ、さらにスペインおよび日本からの銀経済によって世界経済に組み込まれることによって弛緩化した。そして最初の秀吉からの挑戦は退けたものの、女真によって滅亡し清朝が誕生するが、宋代以降の君主独裁体制は継承されており、その意味で変革というより再編とみなすべきだという。後期の講義科目で「中国史」はどうしてもサブ・テーマにならざるをえず、しばらくおざなりにしていたが、やはり草原世界から海域世界まで連動して動くスケール感はとてつもないもの。前期の講義科目の関係もあり、改めてよい勉強の機会になった。

https://www.iwanami.co.jp/book/b508159.html