wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

鹿毛敏夫『世界史の中の戦国大名』

引き続きというか、本来は昨日読了していた電車読書の備忘。これまた明日の講義用に購入していたもの。16世紀半ば以降の戦国大名による地域国家の外交を、伝統的な「中華」世界の殻を破った稀有な事例と評価し、それが欧米諸国の交渉に応用され、伝統的国際秩序を終焉に向かわせた展望。それを推進した西国大名領国のコスモポリタン性を明らかにし、それを一元的に集約するものとして秀吉の「天下統一」と強硬外交が国交断絶によって個別関係を遮断し、徳川政権が一元的に管理・統括する体制を実現したとする。18世紀の欧米の動向を戦国日本が切り開いたとするのは飛躍があり、「四つの口」論との折り合いもあるが、全体状況はすっきりしたように見え、留学生のレポート用にあげる講義の参考文献としては充分。なお硫黄は長期にいたる輸出品で「サルファーラッシュ」といわれても。大友氏と結んだ豪商仲屋氏に関する叙述は本書のもっとも興味深いところだが、算用状から本当に収益システムが説明できるのか。大内義隆は著者のいう地域国家の外交の代表例とはいえるが、これが「天下統一」に向かうと仮定するのは矛盾では。そのあたりは気にかかり、前に紹介したメチエでもあったが、書物は持ち込みでも成り立ちは記してほしいところ。

『世界史の中の戦国大名』(鹿毛 敏夫):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部