wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

グウィン・ダイヤー『戦争と人類』

本日は枚方3コマ。京阪特急が意外と空いていて助かっているが、やはり帰りはヘロヘロ。それでも衝動買いしていた表題書を読了。原始から現代までの戦争の特質を社会的要因・形態などの抽出しながら概観し未来を展望したもの。暴力的だが構成員内部の成人男性の平等性のもつ狩猟採集民社会にはじまり、暴力的で不平等な都市での農耕社会、より不平等で中央集権的な帝国、飢饉を起こさないために農民を従軍させることのできないローマ帝国、貴族に依存する弱い中世国家、依存を避け傭兵軍を雇う「近代国家」、800万人の死者をだした30年戦争後の限定戦争という新概念、フランス革命による大規模な徴兵制と逃亡しない兵士により補給部隊から遠征先での食料調達への変化、愛国心で巨大化した軍隊と性格で射程距離の長い武器による総力戦としての20世紀の戦争、国全体が標的となる戦略爆撃核兵器の登場による大量報復から最小限抑止への転換、ゲリラ戦の条件、テロリズムの戦略、気候変動・大国の入れ替わり・核の拡散という現在の危機と戦争犯罪の追求・国際的共同体の追求という希望と、単なる軍事史ではなく社会構造と戦争の関係を論じ、未来への希望を失わない。当事者の言葉が多数引用、段階ごとにチャート図も掲載されており、講義でも利用させてもらう。

戦争と人類 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン