wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

平岡昭利『アホウドリを追った日本人ー一攫千金の夢と南洋進出』

本日は中世河内八ヶ所の故地に立つ試験場で運転免許証の更新。全くのペーパー・ドライバーで、今後も乗る可能性は余りないのだが、どこかで原付を借りるぐらいは考えられるので、とりあえず出かける。移動時間・講習の待ち時間・さらに帰宅してからもう一度出かける所用があったので、結局一日で読了したものhttps://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/43/9/4315370.html。すでに本書のもとになった専門書の紹介は目にしていて、読みたいと思っていたので購入した次第。近代西欧で珍重された羽毛採取のため、小笠原諸島に始まり、鳥島南鳥島尖閣、ミッドウェーへと、労働者を酷使しながら((鳥島では火山噴火で労働者全滅、各地で商品だけ受け取って置き去りにするケースもあったという)、アホウドリを撲殺して巨万の富を得た人々の物語。さらには肥料・マッチ・兵器の原料となるリン鉱(アホウドリの糞グアノがもと)を求めて、軍と結びドイツ領南洋諸島第一次大戦後は日本領)、南シナ海の島々(一時は日本占領、現在は中国と東南アジア諸国が主権をめぐり対立)への南進にもつながっていくという。近代の山師による略奪的資源開発(アホウドリは何百万羽が20年ほどの間に各地で絶滅したという)と、それを追認していく南進論が具体的に描かれ興味深い。また恒藤恭の岳父・西澤隆二の実父が関係者として登場するのも世界の狭さが感じられるところ。なおアホウドリ乱獲はすでに1920年代には頭打ちになっているようだが、戦後のマグロ・鯨の乱獲と人脈的につながりがあるのかどうかも気になるところ。昨今の空想的領土問題に、歴史的にはこのような前提があったことは(尖閣では払い下げを受けて全てを枯渇させた経営者の末裔が一部で英雄視された、竹島での日本オットセイを絶滅に追い込んだ乱獲も有名)、広く知られるべきだろう。写真は本日立ち寄った樹齢千年ともいう三島神社のクス、他にもクスの巨木がちらほらみられ、もとは淀川左岸低地という環境で、堤の補強のために植えられていたものかもしれない。
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