wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

中村春作編『訓読から見なおす東アジア』

久しぶりになったが、とりあえず電車読書の備忘。昨年から担当している講義科目の関連で、わりと継続的に購入しているシリーズの最終巻。本書はこのところ一気に研究が進んだ感のある漢文訓読に関する共同研究の成果。朝鮮・ベトナムの動向、琉球漢文に薩摩の強い影響があること(前代の五山僧も含めて、本土からの影響力に比べて明清から直接受容した知的文化は意外と少ないのか)、清代満洲語など日本だけでなく周辺の諸事例が紹介されており興味深い。それとともに近世後期からの漢文訓読が近代日本語に強い影響を与えるとともに、漢文そのものが教育勅語イデオロギーともあわせて独特の意味合いを有していたことが示されている。ただ第一巻の共著で一般読者に示すという姿勢は全く後退し、かなりダブりのある寄せ集め的な印象はぬぐえないところ。本巻の刊行が遅れたのはそのあたりも絡んでいるのかもしれないが、概説はやはり編者と執筆者の関係でかなり善し悪しが決まるような気がする。また参考文献に挙げられている比較訓読論の最先端の概説書の著者がメンバーに入っていない点や、昨年から本を出しまくっている著者の名前が一切参考文献に上げられていない点も気になるところhttp://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-025145-7.html。面接ぐらい呼ばれると思っていた任期制教員公募すら壊滅したにもかかわらず、老眼による眼鏡の新調をせざるをえず、昨日はついに講義用PCのバッテリーが機能しなくなり、出費ばかりがかさむろくでもない日々が続いている。辛うじて、講義関連と、来週の報告準備で何とか気力が続いているといった状況。*表題を訂正しました。