wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

渡邊晶『大工道具の文明史』

本日は京都で非常勤の曜日だが、図書館で別の科目ので昨年できなかった15回目のための調べ物。近代の立ち上げで完結しているためその後をどう転がすかが悩みどころ。とりあえず長い19世紀の締めくくりとして日露戦争関係本と新刊史料を借りてきた。電車読書のほうは著者の主著には4月に初稿を出した原稿で勉強させてもらったため、3月末に衝動買いしてしまったモノhttp://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b165845.html。オノ・ノミ・ノコギリ・カンナ・墨掛道具について、「手道具を用いてこの建築をつくる技術が最高の水準に達したとされる一九世紀末から二〇世紀前半」の日本の道具についての説明、「ユーラシア大陸の西、ヨーロッパ文明の源流の一つであるエジプト」からの展開、「ユーラシア大陸の東、中国」における展開、「ユーラシア大陸の東端の島、日本」での展開が記され、木の種類に対応した相違について知ることができる点は有益だが、それぞれで同じ定型句がひたすら繰り返されているのはいただけない。また「日本では、現在でも国土の約七割を森林が占めている」のは「自然を畏れ敬う日本人の心が生き続けてきた」という言説はかなり疑わしい。牧畜の有無と言うより、ヨーロッパ・中国との相違は急峻な地形と豊富な雨量のため皆伐されなかっただけで、近世前期にはかなり森林は減退していたとみるべきだろう。著者が明らかにした15世紀における建築技術史の画期も減少する森林資源の有効活用として生まれたのではないか。なおそれ以上にやっかいなのは著者紹介によると主著が第二版となって昨年刊行されていること。改訂されているかどこかで確認したいのだが、初版を所蔵する行きつけの図書館には何れも入っていない。昨今の図書予算に鑑みると超高価本の第二版購入は望み薄で何とかならないものか。それはさておきこれからでっち上げ書類を仕上げなければならない。